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=== 投影図復元型

2019年度第2回大問6は、原本PDFが未確認で指導動画の文字起こしのみから再構成した出題である(以下の問題文・投影図の記述はすべて指導動画中の説明にもとづく)。1辺4cmの立方体を、投影図(上・正面・横の3方向から見た図)に入った対角線だけを手がかりに3段階にわたって切断していく連続問題で、(1)で切り落とした立体を土台に(2)がさらに切り込み、(2)の状態を土台に(3)がさらに切り込む——豊島岡の投影図復元型の中でも難度・連続性ともに最高クラスの構成になっている。

#mondai("2019年度 第2回 大問6(1)【動画のみ・原本PDF未確認】")[
  1辺が $4 thin "cm"$ の立方体がある。上から見た図・正面から見た図・横から見た図(投影図)には、それぞれ1本ずつ対角線が入っている。これらの対角線に沿って立体の一部を切り落としたとき、残った立体の体積を求めなさい。

  #zukei(width: 60%)[
    #align(center)[※原図は3方向からの投影図(正方形3枚)。上から見た図には正方形の対角(かどからかど)を結ぶ対角線が1本、正面から見た図には別の対角線が1本(左上と右下を結ぶ)、横から見た図にも対角線が1本(左下と右上を結ぶ)入っている。3方向すべてに対角線がちょうど1本ずつしか入っていないことから、立方体のある1つの頂点に集まる3本の辺(各4cm)の先の3頂点を通る平面で、その頂点を含む三角錐を1つ切り落とした形と読み取れる。]
  ]
]
#difficulty(4)
#point[
  投影図に「対角線が1本だけ」入っているときは、立体全体をゼロから組み立てようとせず、まず「元の立方体から欠けている部分(多くは三角錐)」を特定し、引き算で考える。3方向の対角線がすべて集まる頂点こそが、切り落とされた角の位置を教えてくれる。
]
#kaiho[
  上から見た対角線・正面から見た対角線・横から見た対角線は、いずれも立方体の同じ1つの頂点(これをAとする)に集まる3辺の先の3頂点を通る平面の跡である。すなわち、頂点Aと、Aに隣接する3頂点を頂点とする三角錐が切り落とされたことになる。

  切り落とされた三角錐は、直角をはさむ2辺がともに4cmの直角三角形(面積 $4 times 4 times 1/2 = 8$ ($"cm"^2$))を底面とし、高さも4cmなので、体積は

  $4 times 4 times 1/2 times 4 times 1/3 = 32/3$ ($"cm"^3$)

  残った立体の体積は、立方体全体からこれを引けばよい。

  $4 times 4 times 4 - 32/3 = 64 - 32/3 = 192/3 - 32/3 = 160/3 = 53 1/3$ ($"cm"^3$)
]
#kotae[53 1/3 cm³(=160/3 cm³)]

#mondai("2019年度 第2回 大問6(2)【動画のみ・原本PDF未確認】")[
  (1)で残った立体に、さらに投影図にもとづく切断を加える。横から見た図には、(1)の対角線と平行な線が、対応する辺の中点どうしを結ぶ形で新たに入っている。上から見た図には、(1)の対角線はそのまま残っているが、左手前の隅が消えており、さらに左右対称な位置に新しい線(赤線)が入っている。これらの投影図から、残った立体の体積を求めなさい。

  #zukei(width: 60%)[
    #align(center)[※原図は(1)で切断済みの立体の3方向投影図。横から見た図では、(1)のオレンジの対角線に平行な線が、その面の対応する2辺の中点どうしを結んで入っており、立体の上側の一部がさらに切り取られたことを示す。上から見た図では(1)のオレンジの対角線はそのまま残るが、左手前の隅の三角形部分が消えており、代わりに左右対称に赤い線が入っている——これは、(1)で切り落とした頂点Aに隣接する2つの頂点のそれぞれについて、一辺2cm(もとの三角錐の半分の相似比)の小さな三角錐を新たに切り落とし、左右対称な2か所に"三角錐台"状の切り口ができたことを表す。]
  ]
]
#difficulty(5)
#point[
  新しい切り口が「中点どうしを結ぶ線」なら相似比1:2(体積比1:8)、それが左右対称に2箇所現れるなら「同じ形の切り口が2つ」という情報が同時に得られる——実際の長さを求め直さず、比の単位のまま体積計算に持ち込むのが最短ルート。
]
#kaiho[
  (1)で切り落とした一辺4cmの三角錐(頂点Aのもの)と相似な、一辺2cmの小さな三角錐が、左右対称な2箇所でそれぞれ新たに切り落とされている。相似比は $4:2=1:2$ なので、体積比は $1^3:2^3=1:8$。

  もとの一辺4cmの三角錐の体積を8(比の単位)とおくと、一辺2cmの小さな三角錐の体積は1にあたる。左右それぞれの箇所で切り取られる部分は「大きい三角錐から小さい三角錐を除いた三角錐台」なので、1箇所あたり $8-1=7$。これが左右2箇所あるので、合計 $7 times 2=14$(比の単位)を立方体全体から除けばよい。

  比の8にあたる実際の体積は、(1)で求めた一辺4cmの三角錐の体積 $32/3$ ($"cm"^3$) なので、比の1あたりは $32/3 div 8 = 4/3$ ($"cm"^3$)。

  除かれる体積の合計は $4/3 times 14 = 56/3$ ($"cm"^3$)。

  残った立体の体積は

  $4 times 4 times 4 - 56/3 = 64 - 56/3 = 192/3 - 56/3 = 136/3 = 45 1/3$ ($"cm"^3$)
]
#kotae[45 1/3 cm³(=136/3 cm³)]

#mondai("2019年度 第2回 大問6(3)【動画のみ・原本PDF未確認】")[
  (2)の状態からさらに2回切断を加える。上から見ると上下左右対称に切られており、正面から見た図と横から見た図がまったく同じ形になる。この立体の体積を求めなさい。

  #zukei(width: 60%)[
    #align(center)[※原図は(2)からさらに切断した立体の3方向投影図。上から見た図は上下・左右いずれの軸についても対称な切り口になっており、正面から見た図と横から見た図が完全に一致する。これは、(2)で切り落とした手前側の左右2つの隅に加えて、奥側の左右2つの隅にも同じ大きさ・同じ向きの切り落としを対称に施したことを示す(=上面の4つの隅すべてが同じように切り落とされる)。切断面どうしが交わる位置に着目すると、交点はちょうど上の面の中心と4つの側面それぞれの中点になっており、これら5点を頂点とする立体が立方体の中に浮かび上がる。]
  ]
]
#difficulty(5)
#point[
  上段の四角錐と下段の欠けた4つの三角錐は、形はまったく違うのに底面積の合計と高さがそろっているので体積が等しい——このパズル的な"移し替え"に気づければ、5頂点の複雑な立体でも計算なしで直方体に帰着できる。
]
#kaiho[
  (2)で手前の2隅を切り落としたのと対称に、奥の2隅も同じように切り落とされているので、上面の4つの隅すべてが等しく切り取られている。切断面どうしの交点に着目すると、上の面の中心(1点)と、4つの側面それぞれの中点(4点)、合わせて5点を頂点とする立体が残る。

  この立体を、高さがちょうど半分(2cm)の位置で上下2段に分けて考える。

  下段(高さ0〜2cm):底面 $4 times 4$、高さ2cmの直方体から、4隅にある直角二等辺三角形(直角をはさむ辺の長さがそれぞれ2cm)を底面とする三角錐を4つ切り落とした形。

  上段(高さ2〜4cm):底面が正方形を45度回転させた形(ひし形)で、頂点が上面の中心にある四角錐。このひし形の面積は、下段で切り落とした4つの三角錐の底面積の合計にちょうど等しい。

  上段の四角錐と、下段で失われた4つの三角錐は、底面積の合計が等しく高さも共に2cmの錐体どうしなので体積が等しい。したがって上段の四角錐を4つの部分に分割し、下段の4隅の欠けた部分へそのまま移し替えると、隙間なく $4 times 4 times 2$ の直方体がぴったり出来上がる(等積変形)。

  よって求める体積は

  $4 times 4 times 2 = 32$ ($"cm"^3$)
]
#kotae[32 cm³]

#suri-haikei[
  投影図(上面図・正面図・側面図)から立体を一意に復元するという発想は、18世紀にガスパール・モンジュが確立した「画法幾何学(descriptive geometry)」そのものである。一般に3方向の正射影だけでは立体は一意に定まらない(異なる立体が同じ3つの影を落とすことがある——投影の不良設定性)が、この問題群のように各面に対角線が1本ずつしか入らないという強い制約が加わると、凸多面体(立方体を平面で切ってできる立体)の範囲では復元がほぼ一意に定まる。(2)(3)のように切断を重ねるたびに、新しい線が「どの頂点の組を通るか」「どこが中点か」という情報を1つずつ足していくことは、連立方程式に拘束条件を1本ずつ追加して解空間を絞り込んでいく操作と同型であり、最終的に(3)のような5頂点の立体(上面の中心+4側面の中点)にまで一意に絞り込まれる。また(3)の「四角錐と4つの三角錐の体積が等しく、組み替えると直方体になる」という事実はカヴァリエリの原理(高さごとの断面積の対応)のパズル的応用であり、錐体の体積公式 $1/3 times "底面積" times "高さ"$ を計算せずとも、等積変形だけで答えに到達できることを示している。
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#shutsudai-ito[
  見取り図(3D図)をそのまま与えず、あえて3方向の2D投影図だけを見せるのは「頭の中で立体を組み立てる力」そのものを測るための出題設計である——見取り図があれば切り口は目で追えるが、投影図だけでは、対角線の位置・平行関係・対称性という間接的な手がかりから立体の稜線を再構成する作業を、生徒自身の空間認識力に完全に委ねることになる。さらに、この大問を(1)(2)(3)の3段階に分けて同じ立方体を段階的に切り込んでいく構成にしたのは、一度に全体を復元させる一発勝負を避け、「1回切って確定した形を土台に、次の切断情報を追加する」という積み上げ型の思考プロセスを強制するため——(1)を突破できないと(2)(3)には進めず、逆に(1)(2)を正しく積み上げられた生徒は(3)の5頂点の立体という難物にも、パズル的な等積変形で最短ルートに気づきやすくなる。大問6という最終問の位置に置かれているのも、制限時間内に「見えない立体を見る」力と最後まで粘り強く追跡する体力の両方を試す、豊島岡らしい締めくくりの設計だと考えられる。
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